バントの有効性

アウト 走者なし 一塁 二塁 三塁 一、二塁 一、三塁 二、三塁 満塁
0 0.494 0.843 1.140 1.618 1.433 1.840 2.284 2.400
1 0.276 0.557 0.751 0.948 0.991 1.186 1.414 1.642
2 0.105 0.241 0.322 0.344 0.473 0.488 0.626 0.768
表1、期待値(単位は点)

アウト 走者なし 一塁 二塁 三塁 一、二塁 一、三塁 二、三塁 満塁
0 26.4 39.9 58.8 86.4 59.0 86.5 84.2 84.3
1 15.8 27.1 41.7 61.6 42.2 66.8 63.9 66.3
2 6.8 12.9 21.6 24.9 23.5 26.7 28.2 31.9
表2、得点確率(単位は%)   (週刊ベースボール11月28日号より。おそらく2005年のデータだが、ネットでの引用元が消えてしまった)

■表の見方
期待値、得点確率は1シーズン(おそらく2005年)の全球団の各状況についての平均。
例えば無死1塁での期待値0.843は、全球団がその状況で取った得点の平均を表す。
無死1塁の得点確率39.9(%)は、全球団がその状況で得点できた確率を表す。
従って序盤から中盤にかけては、期待値をできるだけ大きくする作戦を取るのが良く、
終盤で1点が欲しい場面では、得点確率をできるだけ大きくする作戦を取るのが良い。

■まず無死1塁の場面でのバントについて考える
バント成功後の期待値と得点確率
1死2塁での期待値・・・0.751(点)
1死2塁での得点確率・・・41.7(%)

バント失敗後の期待値と得点確率(バント失敗でセカンド封殺とする)
1死1塁での期待値・・・0.557(点)
1死1塁での得点確率・・・27.1(%)

これらの数値を用いて打者のバント成功率によって期待値、得点確率がどのように変化するか調べると

バント成功率(%) 期待値(点) 得点確率(%)
70 0.6928 37.32
80 0.7122 38.78
90 0.7316 40.24

バント前の期待値、得点確率と比較すると

バント前の期待値と得点確率
無死1塁での期待値・・・0.843(点)
無死1塁での得点確率・・・39.9(%)

バント成功率が90%で得点確率がやや改善するくらいで、期待値はバント成功率100%でも下がる。
従ってバントは、無死1塁では有効な作戦とは言えないという結論になるが問題点がある。


■問題点
表1と表2は全球団の全打者の平均である。(当然投手を含む)
これらの数字は各球団、各打者によっても異なっているはずである。
従って上の計算だけで無死1塁のバントは有効な作戦ではないとしてしまうのには問題がある。
(投手の送りバントすら有効ではないという結論になってしまうので)


■無死1塁2番バッターの場面でのバントについて考える
一般的にバントをするのに最適であるとされている無死1塁2番バッターの場面でのバントが有効であるかを考える。
2003、2005年の阪神のデータを用いる。結果は以下の通り。

無死1塁場面総数 無死1塁得点頻度 無死1塁得点総数
-4点差以上 2 0(0) 0(0)
-3点差 2 1(50.0) 1(0.5)
-2点差 3 1(33.3) 1(0.33)
-1点差 8 6(75.0) 14(1.75)
同点 29 11(37.9) 27(0.93)
+1点差 2 2(100) 7(3.50)
+2点差 - - -
+3点差 - - -
+3点差以上 3 1(33.3) 7(2.33)
49 22(44.9%) 57(1.16点)
表3、2003年の2番打者(赤星)が強攻した場合の得点頻度、得点総数 
括弧内は得点確率と期待値

無死1塁場面総数 無死1塁得点頻度 無死1塁得点総数
-4点差以上 1 0(0) 0(0)
-3点差 - - -
-2点差 - - -
-1点差 - - -
同点 6 2(33.3) 4(0.67)
+1点差 2 1(50.0) 5(2.50)
+2点差 3 2(66.7) 4(1.33)
+3点差 1 1(100) 1(1.00)
+3点差以上 2 0(0) 0(0)
15 6(40%) 14(0.93点)
表4、2003年の2番打者(赤星)がバントした場合の得点頻度、得点総数
括弧内は得点確率と期待値

無死1塁場面総数 無死1塁得点頻度 無死1塁得点総数
-4点差以上 6 3(50.0) 8(1.33)
-3点差 2 1(50.0) 1(0.50)
-2点差 7 6(85.7) 14(2.00)
-1点差 7 2(28.6) 4(0.57)
同点 46 26(56.5) 54(1.17)
+1点差 2 1(50.0) 3(1.50)
+2点差 - - -
+3点差 2 0(0) 0(0)
+3点差以上 9 6(66.7) 15(1.67)
81 45(55.6%) 99(1.22点)
表5、2005年の2番打者(鳥谷、藤本、関本)が強攻した場合の得点頻度、得点総数
括弧内は得点確率と期待値

無死1塁場面総数 無死1塁得点頻度 無死1塁得点総数
-4点差以上 - - -
-3点差 - - -
-2点差 - - -
-1点差 5 4(80.0) 11(2.20)
同点 9 7(77.8) 13(1.44)
+1点差 1 1(100) 1(1.00)
+2点差 1 1(100) 2(2.00)
+3点差 1 1(100) 1(1.00)
+3点差以上 2 1(50.0) 3(1.50)
19 15(78.9%) 31(1.63点)
表6、2005年の2番打者(鳥谷、藤本、関本)がバントした場合の得点頻度、得点総数
括弧内は得点確率と期待値

 2003年の数字からは、強攻策が効果的、2005年の数字からはバントが効果的という結果となった。
予想していたよりも、バントを選択したケースが少ないため、バントが有効かどうかの結論を出すのは難しい。
加えて2005年はチャンスで今岡が有り得ないくらい打っていたので、検証に値するデータであるのかは疑わしい。
とりあえず、データ数の多い強攻策について調べることにする。

 強攻策を取った場合の得点確率は44.9%(2003年)、55.6%(2005年)となり、期待値は1.16点(2003年)、1.22点(2005年)となった。
これは表1、2での無死1塁での得点確率41.7%、期待値0.843点よりも良い数値である。
表1、2の数値は全球団の平均であるため打撃が好調であった阪神の場合はもう少し良い数字であるはずだが、
それを考慮しても、悪い数値とは言えないだろう。
従って、一般的にバントをするのに最適であるとされている無死1塁2番バッターの場面でも強攻策を選択することは
必ずしも悪い策とは言えない。

■課題
好調なチームで、采配が問題になることは少ない。打撃の調子が悪いチームで、もう少しデータを集めて検証する必要があるだろう。

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